柚木麻子著書のけむたい後輩の書評です。
あらすじ
14歳で作家デビューした過去があり、今もなお文学少女気取りの栞子は、世間知らずな真実子の憧れの先輩。
二人の関係にやたらイラついてしまう美人で頑張り屋の美里は、栞子の恋人である大学教授に一目惚れされてしまう。
名門女子大を舞台に、プライドを持て余した女性たちの嫉妬心と優越感が行き着く先を描いた、胸に突き刺さる成長小説。
独特な視点
良家の女子生徒が集まる横浜の大学。
18歳〜22歳までの子供から大人に変化していくこの時期の女性たちの成長物語。
読んでいてまず感じたのは単純に面白い。
なにか連続ドラマを見ているようなそんな感覚。
栞子、真美子、美里の3人の女性たちを中心に物語は進んでいく。
読んでいてすごいなと感じたのは主人公である真美子視点の話はなく、栞子を通じての真美子、美里を通じての真美子が描かれており、真美子の心境に関してはほとんど書かれていないこと。
それにより真美子の存在がより際立って見える。
真美子の無邪気すぎるがゆえの狂気さ、無意識に現れる天性の才能、底しれぬ優しさ。
この表現力はすごいなと素直に感じました!
三者三様の女性たち
このけむたい後輩はぜひ女性の方に読んでほしい一冊です。
それはきっと男性にはわからないであろう、女性特有のあるあるが多いと思うからです。
栞子のような自称サバサバ系。
自分はその他大勢とは違い、特別な存在。そう信じてやまないが、実はそう信じることでなんとか自分を保っている。
自分という存在を常に求めてくれる人のそばにいることで、自分の存在意義、自己肯定感を維持している。
そんな女性。
真美子のような無垢で、か弱い女性。
でも根は強く、誰よりも才能に溢れており、好きなものに一直線。
ただ無邪気すぎるがゆえに傷ついてしまうことや、周りが見えなくなってしまう。
それでも人を魅力させるなにかがある。
美里のように容姿端麗だが、誰よりも努力家。
夢を追い続けるひたむきな姿、同性から好かれる女性。友達想いで、誰よりも真美子を支えようとする。
男性経験は少ないコンプレックスを表に出さずに、みんなの前ではしっかり者であり続けている。
三者三様の登場人物。
誰が善とか悪とかではなく、どの登場人物にも女性なら共感してしまうところがあると思う。
男の僕でも同じ人間として、なんか共感してしまうところがあった。
特に共感してしまうのは栞子だった。
最初はなんかうざったい人だなあなんて思っていたけど、途中からどこか弱い人間の部分に共感してしまうところがあった。
成長できずに停滞している感じ。誰にでもあると思う。
いつかの自分の姿が重なる。
プロローグとエピローグ
また印象的だったのが、プロローグとエピローグの対比。
栞子と真美子の対面の様子。
プロローグは栞子と真美子の初対面。
エピローグは初対面から、4年の学生生活、そして社会人経験を経て、もう一度二人だけの対面。
そこで栞子に向けられて、真美子が放った核心を突く言葉。
単純にスカッとする部分ではあるのですが、ただそれだけではない何かがあります。
それは読んできた読者によって解釈が異なると思います。
僕は最後少し、真美子が怖くなりました…。
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