今回は朝井リョウさんのどうしても生きてるの感想レビューです。
どうしても生きてる
この小説は短編小説6つにより構成されており、それぞれが独立したストーリーとなっています。
ただ共通して言えるのはどの主人公も、絶望の淵をさまよい続けているということ。
タイトルの【どうしても生きてる】この言葉こそが全ての主人公に当てはまるものだと感じました。
文面は朝井リョウさんの独特な言い回しなのか、比喩的な表現が多く、やや読みにくさがありましたが、慣れてくるとその言い回し、テンポ、比喩の独特さが癖になり、小説の世界観をより一層高めるものとなっていました。
一部分で性的な表現が使われている部分があり、苦手人は注意したほうがいいかも。
それぞれの主人公は皆、社会の中で生きているごくごく一般的な人。
町中ですれ違う、気にも止めないような人物たち。それは自分自身とも重なり合う部分があります。
僕自身、34年間生きてきて、辛いこと逃げ出したいこと、嫌なことはたくさんありました。
それは皆同じです。ずっと平凡、さざなみのような人生の人は殆ど居ません。
ときには荒波の時期があり、それを乗り越えてきた人、今まさに抗っている人、それは様々。
そしてまさに今、荒波の中を壊れそうな船で渡ろうとしている、そんな主人公たちの光の見えない人生が描かれています。
ただ絶望中にいるからこそ、光り輝くものがあると感じました。
それは人間という生き物の人間臭さとう言うものでしょうか。
どうしようにも救いのない状況でも、生きる、生きるしかない人達の生き様というのは、何気なく生きている人よりも生命力が溢れるエネルギーを感じます。
6人の主人公にも、その生命力に溢れるエネルギーが確かにありました。
【どうしても生きてる】この状況こそが命を輝かしている。
僕はまだこの主人公たちのような、行き場のない見えない絶望の淵に立ったことがない為、理解できない部分のありましたが、これからの人生の中で、同じ境遇に合うかも知れない。
そんなときにふとこの小説のことを思い出して、読み返すときが来るのかも。
気になる方はぜひ読んでみてください!
コメント