今回は川村元気著書の百花を読みました!
あらすじ
大晦日、実家に帰ると母がいなかった
息子の泉は、夜の公園でブランコに乗った母・百合子を見つける
それは母が息子を忘れていく、始まりの日だった
認知症と診断され、徐々に息子を忘れていく母を介護しながら、泉は母との思い出を蘇らせていく
ふたりで生きてきた親子には、どうしても消し去ることができない“事件”があった
母の記憶が失われていくなかで、泉は思い出す
あのとき「一度、母を失った」ことを
泉は封印されていた過去に、手をのばす
現代において、失われていくもの、残り続けるものとは何か
すべてを忘れていく母が、思い出させてくれたこととは何か
変わりゆく母の姿
主人公の泉と母の百合子
百合子の認知症状が始まりを見せ、アルツハイマーと診断される
息子の泉はそんな母の変化に戸惑いながらも、定期的に家を尋ねて、介護を続ける…
ただ百合子の症状は悪化するばかりで、町中を徘徊したり、物の管理ができなくなっていく…
僕は理学療法士として13年間医療現場に立っています
もちろん沢山の認知症の方のリハビリも行ってきました
特に訪問看護では自宅で暮らす方の認知症のリハビリを行いました
認知症で変わっていく家族の姿、それを支える家族の姿を見てきました
認知症というと支える家族ばかりが大変な思いをするというイメージがありますが
実際は認知症の方自身もかなり大変な思いをしています
徐々に記憶を忘れていく感覚、自分の出来ないことが増えていく、家族に怒られる
自分が自分でなくなっていく感覚、それは相当辛いことだと思います
泉が百合子の部屋を片付けているときに、百合子がやることを忘れないようにまとめたメモを見つけます
認知症と戦っていた母、その葛藤に気付いてあげれなかった泉、泉は嗚咽しながら泣きます
ただ泉も今までの姿からどんどん変わっていく百合子の様子に苦しんでいきます
前までは母親としてしっかりしていたのが、何も出来なくなっていく…
町中を徘徊したり、トイレを失敗したり、周りの人を忘れたり、悪化していく認知症状
そんな中でも残っていくのもがありました
残されていく記憶
認知症状が進行していく中でも残されていくもの
それは若き頃の思い出
百合子が泉を育てていく中で、見てきた光景
その時の天気、空気感、泉の声、会話、そんな細かいところまで百合子は覚えています
泉はその時のことをハッキリとは覚えていない…
それは母親だからこそ覚えていることなのかもしれません
子供にとっては何気ない景色でも、母親にとっては特別な景色かもしれません
僕自身が初めて喋った日、立った日、怪我をした日、風邪を引いた日
僕は一つも覚えていませんが、きっと親は鮮明に覚えているでしょう
きっと亡くなるその日まで覚えているのかな
認知症で失うものが増えていく中、残されていく昔の記憶、それはその人自身を表しているのかもしれません
そして、泉が見てきた百合子の姿も、泉の中で残っていきます
百合子が最後、泉のことすらわかなくなっていく中で
誰が百合子のことを語っていくのか、泉はふと思います
百合子のなかの記憶が全て消え去っても、泉が百合子のことを覚えていれば完全には消えない
記憶は受け継がれていく、たとえ死んだとしても…
僕がこれから見ていく景色、嫁が見ていく景色、そんなことが記憶として残り受け継がれていく
もし子供が生まれたら、その子どの記憶がきっと受け継がれていく
そんなことを思ったら、何気ない日常も大切にしないといけないなと感じました
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